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心理統計で用いられる手法(分散分析・多変量解析など)

前回は,第3回試験のブループリントで示されている「統計に関する基礎知識」について取り上げましたので,今回は「心理学で用いられる統計手法」について説明していきます。

前回分をまだ読まれてない方はこちらからどうぞ。

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「心理学で用いられる統計手法」のキーワードは以下のとおりです。

分散分析・多変量解析(因子分析・重回帰分析・  構造方程式モデリング)・テスト理論・メタ分析


分散分析

分散分析の前に,パラメトリック検定とノンパラメトリック検定について説明をします。

標本を取り出した母集団が正規分布(平均値を中心として左右対称な釣鐘型に広がる分布のこと)に従っているかどうかによって適用可能な統計手法が異なります。

 

母集団の分布について正規分布のような特定の分布を仮定しない検定をノンパラメトリック検定と言い,代表的な方法としてχ二乗検定(名義尺度の連関についての検定),U検定(2群の平均値の差の検定)があります。

 

一方,母集団が正規分布に従うことを仮定する検定をパラメトリック検定と言います。平均や分散を用いることから量的変数(間隔尺度・比率尺度)のみにしか適用できません。代表的な検定として,t検定(2群の平均値の差の検定),相関,そして分散分析です。

分散分析とは,3群以上の平均値の差の検定に用いられる手法です。

結果に影響を及ぼす変数を要因,要因に含まれる項目を水準と言いますが,1つの要因に含まれる水準間の平均値の差を検定するものが一要因分散分析,2つの要因における水準間の平均値の差を検定するものが二要因分散分析と呼ばれています。

分散分析の考え方としては,

データ全体のばらつき(全体平方和)を,平均値の差によって説明できるばらつき(群間平方和)と平均値の差では説明できないばらつき(群内平方和)に分けるところにあります。群間平方和が群内平方和よりも有意に大きければ,各群の平均値の間には標本の誤差よりも大きい違いがあると判断されます。

実際には,2つの平方和を比較するのではなく,平方和を自由度(ある変数において自由な値を取れるデータの数)で割った平均平方を用います。群間の平均平方と群内の平均平方の比であるF値を検定量として,F分布を用いて検定を行います。

F=群間の平均平方(群間平方和÷自由度) ÷ 群内の平均平方(群内平方和÷自由度)

これによって,3つの母平均に差があることが分かっても,具体的にどの群との間に有意な差があるのかは分からないため,その後,多重比較が行われます。

二要因分散分析の場合,それぞれの要因の単独の効果(主効果)と要因同士の組み合わせの効果(交互作用効果)を検討します。交互作用が認められる場合,片方の要因の水準毎にもう片方の要因の効果を検討することになります。これを単純主効果の検定と言います。

多変量解析

多変量解析とは,3つ以上の変数を一括して統計的処理を行う手法の総称です。

独立変数(影響を与える変数・説明変数とも言う)と従属変数(影響を受ける変数・目的変数,基準変数とも言う)を設定する場合と設定しない場合とで手法が分けられます。

●独立変数・従属変数を設定するもの

①重回帰分析

複数の独立変数から1つの従属変数について予測や影響を調べる方法です。

一般的には最小二乗法がよく用いられています。従属変数の実測値と予測値の差を残差といい,残差の二乗和が最小となるような定数と偏回帰係数を求めます。

また,従属変数の実測値と予測値の相関を重相関係数,重相関係数の二乗を決定係数と言います。決定係数が0であるという帰無仮説を検討でき,これを棄却できたときは,偏回帰係数を0とする帰無仮説を検定します。

なお,独立変数間に強い相関関係があると多重共線性を起こして標準偏回帰係数を不安定にするため,相関の高い変数の一部を除く必要があります。

②構造方程式モデリング

観測変数と潜在変数の間に因果関係のモデルを設定し,実際のデータに適合しているかを検討する分析です。

回帰分析や因子分析など多くの多変量解析を含んでいる総合的な分析とも言えます。

仮定したモデルの分散共分散が観測されたデータの分散共分散にできるだけ適合するように母数を推定します。母数の推定には最尤法や最小二乗法が用いられます。

●独立変数・従属変数を設定しないもの

①因子分析

複数の変数間の背後にある共通因子を抽出する方法です。

因子を抽出するために,主因子法や最尤法,最小二乗法が用いられます。因子を抽出した後は,1つの変数と1つの因子との結びつきを強くし他の因子との関係を少なくするような単純構造を探るために,因子の回転を行います。回転後に因子間の相関を認める斜交回転(プロマックス回転)と相関を認めない直交回転(バリマックス回転)があります。単純構造を得やすいのは斜交回転になります。

②主成分分析

複数の変数の情報を集約するものです。

相関関係にある観測変数を限りなく少ない主成分へと分解し,データを要約することで新たな合成変数を作成します。


テスト理論

個人の意識や行動,性格などの特性を測定する尺度(テスト)を開発するための理論です。

古典的テスト理論,項目反応理論,構造分析型テスト理論,ネットワーク型テスト理論の4つに大別されます。

①古典的テスト理論

テストの妥当性と信頼性についての概念規定とその定式化に関するものです。テスト項目の結果を総合したテスト得点に関する統計的理論と分析を指しています。テストの結果として表れる得点は,真の値と誤差が足されたものであり,誤差がより小さいものが良いテストされます。

②項目反応理論

各テスト項目について,個々の項目に正答または回答した確率に基づた理論や分析を指します。テスト項目の特徴分析だけでなく,受験者の潜在的な特性も推定できます。古典的テスト理論では解決できなかった問題を扱うことができることから,実用化されるようになってきました。

③構造分析型テスト理論

①・②がおもに入試などの大人数を想定して開発されてきたのに対し,学級などの小規模を対象に提案されたものです。テスト結果の得点行列を,受験者及び項目の正答率順に並び変えて受験者の特性を分析するS-P表分析,項目間の順序関係をグラフ構造として表現するIRS分析があります。

④ネットワーク型テスト理論

①~③の長所を取り入れた新しいテスト理論です。確率ネットワーク(因果関係を確率により記述するモデル)をもとに,項目間の構造を推定し,テストの作成・受験者の正誤予測を行うものです。

メタ分析

同一の研究課題に関して,それぞれ独立に行われた研究の結果を統計的手法によって統合する方法です。

複数の研究で行われた仮説検定の結果を統合して全体としての仮説検定を行う方法と,複数の研究で計算された効果量や相関係数といった推定量を統合し,全体としての推定量を求める方法があります。

学問分野における理論の発展に貢献するメリットがある一方で,問題点も抱えています。

メタ分析のためのデータ収集においては,学術雑誌に掲載される論文から集めることになりますが,掲載される論文の多くは有意差のあるうまくいった研究であることが問題点の1つとして挙げられます。また他にも,対象となる研究の質がどれだけ同質なのかということなどがあります。


以上で,心理統計に関する説明を終わります。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

お疲れさまでした。