心理学を学ぶ人のためのブログ

心理学における実証的研究法とは

心理学とは,心と行動を科学的に研究する学問です。

心という目に見えない曖昧な対象を調べるためには,
生理的な反応や表情,言葉などの行動から手掛かりを得る必要があります。

そのための代表的な手段として,
実験法・調査法・観察法・検査法・面接法
の5つが挙げられます。


実験法

統制された人工的な条件下において,ある現象の因果関係を明確にする方法

ある現象に影響を及ぼす要因を調べるために,いくつかの条件に操作を加えていきます。
この操作された条件を独立変数と言います。
そして,独立変数によって影響を受けるものを従属変数
独立変数以外で従属変数に影響を与えるものを剰余変数(交絡変数)と言います。

(例)「ある文章を音読で記憶させるとき,文章が長くなるほど,記憶するまでに必要な音読回数が増える。」という仮説を検証する際,実験者が操作する文章の長さが独立変数であり,従属変数は音読回数になります。剰余変数は,いくつか考えられますが,年齢や音読の速さなどが挙げられます。

どのように独立変数を操作するか,どのような剰余変数を統制するかが重要であり,
実験計画(実験デザイン)が大切な役割を果たします。

実験法の基本となる実験計画は統制群法です。

実験参加者を2つのグループに分け,条件を操作された方を「実験群」,操作されていない方を「統制群」として,それぞれから得られたデータを比較する方法です。
これは,個体差という剰余変数を統制するものであり,実験参加者間計画とも呼ばれます。

そしてもう一つ,実験参加者内計画という方法があります。
これは,同じ実験参加者に対してすべての条件で実験を行うものです。
実験参加者間計画と比べたとき,

  • 条件間の個人差がより小さくなる
  • 必要な実験参加者の数が少なくて済む

という利点がある一方,欠点として

  • 実験参加者の拘束時間が増える
  • 実験を繰り返すことで練習効果が生じるおそれがある(条件の実施順序をランダムに割り当てカウンターバランスを取る必要がある)

という特徴があります。

※留意点

実験者効果

実験者が自分の仮説が支持されるように振る舞ってしまうこと

要求特性

実験参加者が実験者の期待通りに振る舞おうとすること

調査法

設定された質問項目に対する回答者の自己報告を収集する方法

あらかじめ用紙した質問紙に同じ方法で回答してもらう方法が一般的です。

多数の参加者に対して一斉に実施することが可能で,複雑な現象や問題を扱える一方で,因果関係を明確にすることは難しく,回答者に言語能力と自己評価能力が必要であり,また,意図的に回答を歪めることもできるという問題点もあります。

具体的な方法は以下のとおりです。

  • 自由記述形式:質問に対して自由に回答させる。仮説がないときの探索的な検討に有効
  • 多肢選択形式リッカート法(質問に対して「当てはまる」「やや当てはまる」「当てはまらない」などと段階的に回答させる方法),セマンティック・ディファレンシャル法(SD法,「良いー悪い」「明るいー暗い」など対になる形容詞を用いて,どちらの方に近いのか段階的に評価させる方法),複数回答法(選択肢の中から当てはまるものを複数個選択させる方法)の3つに分けられる。

これらの方法によって,相関関係が見られるかどうかを検定します。

相関関係とは,2つの事柄のうち一方が変化すると,それに伴ってもう一方も変化するという関係であり,一方が増えればもう一方も増えるときは「正の相関」,一方が増えればもう一方は減るときは「負の相関」があると言います。

※留意点

ダブルバーレル質問

1つの質問項目の中で2つの内容を問うていること。例えば,「携帯電話の価格や機能に満足していますか。」という質問では,満足しているという回答が得られても,それが価格についてなのか,機能についてなのかが分からない。

キャリーオーバー効果

前の質問への回答が次の質問への回答に影響すること。質問の順番や内容を検討する必要がある。

イエス・テンデンシー

「はい。」か「いいえ。」かで聞かれているものには「はい。」と回答されやすい。

観察法

対象の行動を注意深く見ることによってその行動を理解しようとする方法

観察される状況にどれだけ人為的な操作を加えるかによって,自然的観察法と実験的観察法に大別されますが,実験的観察法は実験法に含まれることもあります。

観察方法と記録方法によって,それぞれ分類されています。

観察方法による分類は以下のとおりです。

  • 時間見本法:一定の時間間隔で区切って,それぞれの時間単位ごとに対象となる行動がどれだけ起きたかを観察する方法
  • 場面見本法:対象となる行動が起きる頻度が高い場面を選んで,その場面で生じる行動を観察する方法
  • 事象見本法:特定の行動に焦点を当てて,その生起過程を観察する方法
  • 日記法:特定の個人を日常生活の中で観察し記録する方法

記録方法による分類は以下のとおりです。

  • 行動目録法:あらかじめ決められた行動カテゴリーの行動頻度を記録する方法
  • 評定尺度法:対象とする行動をあらかじめ設定した評定尺度によって記録する方法
  • 行動描写法:生じた行動について状況を含めて詳細に記録する方法

留意点

信頼性の確保

同じ事象なら何度見ても,誰が見ても同じデータになることが求められる。カッパ係数という観察者間の評定一致率によって確認できる。

観察者バイアス

観察者が期待している行動に注目し過ぎて,それ以外の行動に気づきにくくなること。

検査法

心理学的検査を用いて心理学的な特性や状態を測定する方法

大別すれば,知的能力に関する検査とパーソナリティ検査とに分けられ,パーソナリティ検査には,質問紙法・投影法・作業検査という種類があります。それぞれについて心理検査が開発されていますが,今回は各心理検査については省略します。

  • 質問紙法:意見・態度・行動特徴・性格などを知るために作成された一連の質問リスト(心理尺度)が記載された質問用紙に回答させるもの。代表的な検査:YG性格検査,MMPI,TEG
  • 投影法:曖昧な図版や文章を提示して回答を求めるもの。対象者が何を測定されているのか分からないという特徴がある。代表的な検査:ロールシャッハ・テスト,TAT,SCT,P-Fスタディ,バウムテスト
  • 作業検査:単純作業を一定時間課し,その作業量の推移に基づいてパーソナリティを測定するもの。代表的な検査:内田クレペリン

留意点

テストバッテリー

パーソナリティ検査においては,それぞれの検査に強み・弱みがあることから,各検査を組み合わせて用いることが大切であり,検査の組み合わせをテストバッテリーという。

面接法

対象者と対面での話し合いを通じて情報を収集する方法

面接法は,面接がどれだけ構造化されているかによって以下のように分かれます。

  • 構造化面接:あらかじめ定められた順序や内容で質問が行われる。信頼性は高いが,対象者が質問内容を誤解するおそれがあり,妥当性に問題が生じる場合がある。
  • 半構造化面接:質問内容はおおむね決められているが,枝分かれの質問をしたり,質問の順序を入れ替えたりすることがある。
  • 非構造化面接:自由面接ともいい,構造化された質問は用いない。妥当性は高いが,面接の進め方が面接者の技量による部分が大きく,信頼性に問題が生じる場合がある。

留意点

ラポール

面接者と対象者との友好的関係のことを言い,対象者が話しやすいと感じるような関係性を構築することが大切である。

面接者バイアス

面接者の年齢や性別によって対象者の回答に影響を与えるもの。他の検査と比べて,面接者の存在が回答により強く影響を及ぼしやすい。