心理学を学ぶ人のためのブログ

精神物理学の基礎

今回は,感覚知覚心理学と呼ばれている分野になります。

その基礎となっている精神物理学について解説していきます。


感覚と知覚

感覚とは,外界からの光や音などの情報を感覚器官が受け取るときの末梢的な体験です。

それに対して知覚とは,感覚器官を通して得られた情報に対する総合的な判断を含む中枢的な体験になります。

感覚だけを主観的に体験することは難しく,このことについてゲシュタルト心理学の創始者であるウェルトハイマーは

「私は明るさや色調を見ているのではない。空や木を見ているのだ。」

と言い表しています。

ちなみに,感覚は受け取る情報の種類によって以下の8種類に分類されます。

五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)+ 運動感覚・平衡感覚・内臓感覚

この感覚の種類のことを感覚モダリティと言います。

精神物理学(心理物理学)

感覚が生じるために必要な最低限の刺激量のことを刺激閾(絶対閾),2つの刺激の違いを区別できる最低限の刺激量の差を弁別閾(丁度可知差異)と言います。

ドイツの生理学者ウェーバーは,弁別閾は標準刺激の刺激量に比例することを発見しました(ウェーバーの法則)。

⊿(弁別閾)/ I(刺激量)= k(定数)

ウェーバーの法則は,心理学において最初に数量化された法則でもあります。

これを同じくドイツの学者であるフェヒナーが発展させて感覚自体の大きさを表したのがウェーバー・フェヒナーの法則です。なお,このフェヒナーが外界からの刺激と感覚・知覚との関係の定量化を目指す精神物理学を提唱しました。

S(感覚量)=k(定数)・logR(刺激量)

感覚量は刺激量の対数に比例するというものであり,弱い刺激においては少ない刺激量の差で敏感に気づくことができますが,強い刺激においては,大きな差がないと弁別できません。

ウェーバー・フェヒナーの法則は,感覚の種類や実験の条件によって成立する範囲が狭いという問題があり,スティーヴンスがマグニチュード推定法(基準となる刺激に対する評価を単位として,観察刺激をそれに対する比率として評価する方法)を用いてさらに発展させたのが,スティーヴンスのべき法則です。

Ψ(感覚量)=k・I(刺激量)のa乗

kは,刺激の種類と単位によって決まる定数

aは,刺激の種類によって決まる指数

感覚量は刺激量のべき乗に比例するというもので,刺激の種類や強さに応じてaとk を選ぶことで,ウェーバー・フェヒナーの法則よりも広範囲の感覚を扱うことができます。ただし,研究方法において個人差を無視していることから妥当性に疑問を持っている人も多いようです。

現在では,刺激の弁別について,信号検出理論というものが応用されています。通信工学理論からタナーとスウェッツが心理学分野に持ち込んだものです。

人が知覚する刺激には必ずノイズが存在しており,ノイズが混ざっている中から特定の情報(信号)を検出するプロセスをモデル化したものです。

精神物理学的測定法

精神物理学において,絶対閾や弁別閾を調べるためにいくつかの方法が研究されてきました。その代表的な方法を3つ紹介します。

恒常法(当否法)

あらかじめ,刺激値を一定の間隔で数段階設定しておき,各段階の刺激をランダムで実験参加者に呈示し反応を求める方法です。実験には長時間を要しますが,実験参加者の意図や予測が入りにくいため,極限法や調整法に比べて精度は良いとされています。

極限法(丁度可知差異法)

刺激の強さを徐々に大きくしていく上昇系列と徐々に小さくしていく下降系列を組み合わせて閾値を調べる方法です。恒常法よりも試行回数が少なく済み,データの処理も簡便にできますが,実験参加者の予測が入り込む可能性があります。

調整法(平均誤差法)

実験参加者自身が刺激の強さを調整して,ちょうど見えるか見えないかといった絶対閾や弁別閾を探り当ててもらう方法です。恒常法や極限法と比べて実施が簡便である一方,実験参加者の主観に左右されるという問題もあります。