心理学を学ぶ人のためのブログ

人格・パーソナリティの概念と諸理論

十人十色という言葉があるように世の中には様々な人がいます。

その多様な人間を理解しようと,パーソナリティや性格について数々の研究がされてきました。

今回はそんなパーソナリティ心理学の導入として,パーソナリティの概念や代表的な理論について説明します。


人格・パーソナリティとは

定義

パーソナリティ(人格)は,『心理学辞典』(有斐閣)において以下のように定義されています。

人の,広い意味での行動(具体的な振る舞い,言語表出,思考活動,認知や判断,感情表出,嫌悪判断など)に時間的・空間的一貫性を与えているもの

時間的一貫性(継時的安定性)は時間経過による変化が少ないこと,空間的一貫性(通状況的一貫性)は状況による変化が少ないこととされています。

一方,人格と似た言葉に「気質」や「性格」があります。

気質は,生まれ持った素質的な傾向で,個人の情動反応の特徴を意味しています。遺伝の影響が大きく,生涯を通じて変化しにくいものです。

性格は,キャラクター(character)の訳語であり,「刻み込まれたもの」を示すギリシャ語を語源に持ちます。人格が「仮面」を意味するペルソナ(persona)という言葉に由来していることを踏まえると,性格はより遺伝的な意味合いが強いものであり,人格は社会内での役割的なものという違いがあります。

パーソナリティの理論

パーソナリティや性格をどのようなものとして捉えるかは研究者によって様々です。

その中から,代表的なものを紹介します。

特に類型論と特性論は最もよく取り上げられる理論であるので,今回は概要にとどめて別の記事において詳しく説明します。

精神分析的理論

フロイト(Freud, S.)が展開した理論です。

パーソナリティは

・イド(無意識の本能的な性欲動)

・超自我(良心・道徳心)

・自我(意識的な自分)

の3領域から成り立つとされています。

快感原則に従うイドと禁欲的な超自我を調整するために,現実原則に従う自我が重要視されます。

場理論

ゲシュタルト心理学の研究者であるレヴィン(Lewin, K.)による理論です。

レヴィンは「B=f(P,E)」の公式を提唱し,行動(B)は人(P)と知覚している状況(E)の組み合わせによって生じるとする相互作用論を主張しました。

そして,分化度(生活領域や欲求の分化)の差異や構造の型(パーソナリティの発達具合や調和)の差異,素材(流動性・弾力性)の差異などから個人差が生じると説明しています。

パーソナルコンストラクト理論

ケリー(Kelly, G. A.)はパーソナルコンストラクト理論(個人的構成概念理論)を提唱しました。

人はそれぞれにコンストラクト(構成概念)を内に形成し,それによって周りの出来事を理解したり予測したりしているという理論です。

文化によって共通して形成されている構成概念もあれば,個々人に独自のものもあり,これによってパーソナリティが形成されていると考えられています。



類型論

パーソナリティや性格の特徴をカテゴライズして理解する方法を類型論と言います。

クレッチマーやシェルドンによる身体的類型論が有名です。

その人の大枠を捉えたり,他の類型と比べたりするのに役立つ一方,類型に当てはまらない個性や,ある類型と他の類型との間にあるような中間型が無視されやすい面もあります。

詳しくはこちらの記事を参照ください。

パーソナリティの類型論

特性論

一定の行動傾向を表す特性の量的な程度とその組み合わせによって個人の特徴を理解する方法を特性論と言います。

オルポート(Allpart, G. W.)が特性という概念を初めて導入し,他者と比較できる共通特性と比較できないような個人特性を提唱しました。

特性論は類型論よりも個人の特徴をより正確に捉えることができる反面,全体的なその人らしさを把握するのが難しい傾向にあります。

一貫性論争(人間ー状況論争)と新相互作用論

定義にあるように,パーソナリティは時間的・空間的な一貫性が想定されています。

しかし,ミシェル(Mischel,1968)が空間的一貫性について批判的な意見を主張したことで一貫性論争と呼ばれる議論が活発になりました。

ミシェルは,異なる状況における人の行動には0.2~0.3ほどの相関しかないことや,パーソナリティの概念は観察者の行動観察によって形成されたものでありバイアスが生じていることなどから,人の行動に状況を超えた一貫性はないと主張しました。

ミシェルの意見に対し,特性論の研究者らはビッグファイブと呼ばれる特性が文化に普遍的であることや遺伝的な説明率が大きいことなどを主張し反論しました。

こうした,行動の原因を人の内的要因に求めるのか外的な状況に求めるのか,行動には空間的一貫性があるのかといった論争は20年近く続き,折衷的な立場である新相互作用論が生まれました。

新相互作用論はマグヌセンとエンドラー(Magnusson & Endler, 1977)により提唱されたアプローチです。

以下の4つが基本的な前提とされています。

・人の行動は,個人的な要因と状況の双方向的な相互作用とそのフィードバックによって説明される

・相互作用の過程の中で,個人は意図的かつ能動的な行為者として機能する

・相互作用による行動の決定因として,個人側では認知的・感情的な要因が大きく影響する

・状況側においては,個人が持つ状況に対する心理的意味が重要となる