心理学を学ぶ人のためのブログ

記憶の仕組み

今回は,記憶の仕組みについて説明します。



記憶の過程

記憶は,過去の経験を保持して後にそれを再利用する機能のことであり,符号化・貯蔵・検索という3つの過程に分けることができます。

符号化(記銘)

情報を覚える段階のことです。

感覚器官から入力された情報をある意味に変換して記憶として貯蔵するまでの一連の情報処理過程になります。

カメラで例えるなら,シャッターを切ってフォルダに画像が保存されるまでの過程です。ただし,人間の場合は何らかの意味付けがされなければ情報を長く保存することができません。

貯蔵(保持)

頭の中に情報を留めておく段階です。

カメラで言うと,撮った写真がフォルダに保存されている状態のことですが,人間の記憶の場合は,事実をそのまま覚えているのではなく,本人の推論や解釈に基づいて情報が修正されています。

検索(想起)

貯蔵されている情報を思い出す段階です。

カメラで言うと,前に撮った写真をフォルダから探して表示させることです。カメラでは自分でデータを消去しなければ撮った時の状態のまま保存されていますが,人間の場合は,時間の経過とともに記憶が減衰する忘却という現象が生じます。

記憶の種類

アトキンソンとシフリンは二重(多重)貯蔵庫モデルを提唱しています。

それによると,記憶には,感覚記憶・短期記憶・長期記憶という3つの種類があります。

感覚記憶

感覚器官から得られた外界からの情報はまず感覚記憶(感覚貯蔵庫)に入ります。

この感覚貯蔵庫は瞬間的にはほぼ全ての情報を保持できるほど容量は大きいですが,1秒ほどしか保持できません。

感覚貯蔵庫に入った情報のうち,注意を向けられたものが短期記憶(短期貯蔵庫)に送られ,それ以外の情報は失われます。

短期記憶

注意を向けた情報を一時的に保管しておく記憶のことです。

15~30秒ほど情報を保持できますが,容量には限りがあります。

容量はマジカルナンバー7(±2)と呼ばれており,一時的に覚えておける量は平均して7チャンク程度とされています。

チャンクとは情報を知覚するときの情報のまとまりのことです。例えば,「りんご」という言葉は,単語として見れば1チャンクですが,「り」と「ん」と「ご」の仮名として認識すると3チャンクとなります。記憶したいことがあるときには,情報をまとめて認識すること(チャンキング)が効果的です。

短期記憶に入った情報は,反復的に想起すること(維持リハーサル)で短期記憶として保持できる時間を延ばすことができます。

また,すでに持っている知識と関連付けること(精緻化リハーサル)で長期記憶(長期貯蔵庫)へと送られます。

なお,短期記憶の情報処理機能を重視したものは作動記憶(ワーキングメモリー)と呼ばれます。計算や読書などの認知活動をするためのものであり,次に説明する長期記憶内にある知識の参照も担っています。

長期記憶

長期記憶に転送されてきた情報は,半永久的に持続され,容量にも限界はないとされています。

長期記憶は情報の質によって以下のように区分されています。

エピソード記憶

どこで何があったのかなどの,自分の経験に関する記憶です。

 

意味記憶

一般的な知識や言葉などに関する記憶です。

 

手続き記憶

自転車の乗り方といった運動的なスキルや物事の手順に関する記憶です。

過去の経験か未来の行動に対する情報かという観点からは,回想記憶と展望記憶に分けられ,

言葉で表現できるかできないかという観点からは,宣言記憶と非宣言記憶に分けられます。

また,記憶を想起することを意識するかという区分もあり,顕在記憶と潜在記憶と呼ばれます。手続き記憶などの無意識のうちにできることは潜在記憶に含まれます。

長期記憶の構造

長期記憶が貯蔵されている仕組みについて2つの代表的なモデルが提唱されています。

階層ネットワークモデル

コリンズとキリアンが提唱したもので,概念が階層構造になっていると仮定するモデルです。

頭の中に「りんご」(下位),「果物」(中位),「植物」(上位)などのようなラベルが貼られたファイルボックスが階層的に配列されていて,そのファイルボックスの中にはラベルに関する情報(「りんごは赤い」など)が入っているというものになります。下の階層に属するラベルはより上位のラベルがもつ特徴を含みます。

しかし,階層構造に反するデータも得られていることから,現在では修正が加えられた連想ネットワークモデル(意味ネットワークモデル)が有力とされています。

連想ネットワークモデル

コリンズとロフタスが提唱したものです。

概念がそれぞれ1つのノード(下図の楕円)で表され,関連性のある概念がリンク(下図の線)で結ばれています。各ノードの距離が意味的な関連性の強さを示しています。

ある概念が処理されると,その概念と関連性が強い別の概念も活性化され,それが広がっていくと考えられており,これを活性化拡散と呼びます。

 

記憶の忘却についてはこちらの記事でまとめました。

人はなぜ忘れるのか ~勉強したのにすぐに忘れてしまう人のための心理学~