心理学を学ぶ人のためのブログ

学習心理学の基礎理論

人や動物の行動には,

①生得的に備わっている本能的な行動
②後天的に経験によって身に付ける行動

の2種類があります。

②の行動を対象として,人や動物が経験によっていかに行動を変容させるのかについて研究する分野が学習心理学になります。

今回は,学習心理学における基礎的な学習理論について紹介します。


古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)

パブロフの犬

ロシアの生理学者であるパブロフが発見した理論です。

犬に餌を与えれば,唾液反射が生じます。

そして,ベルの音を鳴らしてから餌を与え続けると,ベルの音を聞くだけで唾液反射が生じるようになります。

このように,本来は関係がない刺激と反応を結び付けさせることを古典的条件づけまたはレスポンデント条件づけと言います。

餌が与えられると唾液が出るという生得的な反応を無条件反応,無条件反応を引き出す刺激(例:餌)が無条件刺激と呼ばれます。条件づけによって形成された反応は条件反応,条件づけに用いられる刺激(例:音)を条件刺激と言います。

条件づけは,無条件刺激と条件刺激をどのタイミングで提示するかによって4つに区別されます。

①同時条件づけ:条件刺激(音)と無条件刺激(餌)を同時に提示

②延滞条件づけ:条件刺激(音)を先に提示し,後からそれに重ねて無条件刺激(餌)を提示

③痕跡条件づけ:条件刺激(音)の提示終了後に無条件刺激(餌)を提示

④逆行条件づけ:無条件刺激(餌)を提示後に条件刺激(音)を提示

この中では,②の遅延時間を短くしたものが最も容易に条件づけができるとされています。

アルバート坊やの実験

パブロフに影響を受けたアメリカの心理学者ワトソン(行動主義心理学の創始者)が行った恐怖条件づけの実験です。

現代では倫理的にアウトな実験内容になっています。

ペットとして白ネズミをかわいがっていた生後11か月のアルバート坊やを対象として,彼が白ネズミに手を伸ばそうとしたときに,背後で大きな金属音を打ち鳴らし恐怖を与えて泣かせることを繰り返した結果,白ネズミを見るだけで泣くようになったというものです。それだけでなく,アルバート坊やは白ネズミでなくても,白くてふわふわとしたすべてのものに対して恐怖反応を示すようになりました。

ワトソンは,この実験結果から,大人が抱くような不安や恐怖も,これに類似した幼年期の経験に由来していると主張しました。

このように,ある刺激に条件づけられた反応が別の刺激においても生じることを般化と言います。


オペラント条件づけ(道具的条件づけ)

人を含む動物は,自発的な行動から得られた結果に影響を受けて次の行動が変化していきます。

この学習の過程をオペラント条件づけまたは道具的条件づけと言います。

ネコの問題箱

アメリカの心理学者ソーンダイクが行ったオペラント条件づけの先駆けとなる実験です。

仕掛けを操作すれば扉が開いて外にある餌を食べられるようになる箱の中にネコを入れます。

ネコが餌を取ろうとして様々な行動を取ると,偶然,仕掛けを解除できるときがあります。

それを繰り返していくことで,仕掛けを操作すれば餌を食べられると学習し,脱出までの時間も短くなりました。

これが試行錯誤学習と呼ばれるものです。

試行錯誤学習は刺激となる状況(Stimulus)とそれに対する反応(Response)が結合するS-Rの連合学習であり,効果の法則に従うとされています。快をもたらした反応はその状況とより強く結びつき,不快をもたらした反応はその状況との結合が弱まるというものです。

スキナー箱

アメリカの心理学者スキナーが行った実験です。

スキナー箱には,ブザーやランプ,餌を出すためのレバーやボタンが付いています。ブザー音が鳴ったときにレバーを押して餌を得ることを繰り返すと,ブザー音が鳴るときのみレバーを押す行動が表れるようになります。

このとき,ブザー音を弁別刺激,レバーを押す行動をオペラント行動,餌を強化子と呼びますが,オペラント反応はこの弁別刺激・オペラント行動・強化子の三項随伴性によって成り立ちます。

レバーが押されたときに餌を与えるときと与えないときの割合を変化させることで,オペラント行動の生起率も変動します。餌を与えることで強化されたオペラント行動は,強化をやめると一時的に増えますが,その後生起率は低下していきます(消去)。一般的に,強化回数が多いほど消去されにくく,消去された数が多いほど消去されやすくなります。

生物学的制約

条件づけはすべての動物に対して一様に成立するのではなく,生物学的・進化論的な制約が働きます。

代表的なものがガルシア効果(味覚嫌悪学習)と呼ばれる食物嫌悪の学習です。食事を取った後に体調が悪くなると同じ食べ物を食べたくなくなるといったように,生物の本来の機能に沿った味覚刺激などはそうでないものより条件づけが成立しやすいことが明らかになっています。

また,ブタやアライグマにオペラント条件づけを過剰に訓練すると,オペラント行動から逸脱して自然環境の中で餌を扱うときのような本能的な行動が出現するようになります(本能的逸脱)。

認知的学習

洞察学習

ドイツの心理学者ケーラーによる実験から明らかになりました。

チンパンジーに対して,檻の中にある短い棒と檻の外にある長い棒を組み合わせて檻の外にある餌を手繰り寄せるという問題解決を行わせました。その結果,しばらく戸惑ったような反応を示した後に突然課題を解決しました。

試行錯誤を重ねることなく,瞬間的な洞察によって行われた学習ということで洞察学習と呼ばれます。

潜在学習

報酬がなく強化されていないときでも潜在的に進行する学習のことを潜在学習と言います。

アメリカの心理学者であるトールマンは,反応が強化されなくても学習が進む場合があることを示しました。

ネズミを2つのグループに分けて迷路学習の実験を行いました。

グループAに対してはゴール後に餌を与え,グループBには初めの10日間は餌を与えず11日目以降から餌を与えました。

両者の成績を比べると,11日目まではグループBの方が悪かったものの,12日目からはさほど変わらない成績になりました。

このことから,強化がなければ実際の行動には表れないものの,空間的な位置関係(認知地図)は強化がなくても学習できていることが明らかになりました。

社会的学習理論

自分の行動だけでなく,他者を観察し模倣することによっても学習することができるとするものが社会的学習理論であり,カナダの心理学者バンデューラによってまとめられました。

バンデューラは,他者の行動を観察したり,他者の反応が強化・罰を受ける場面を見たりすることで学習が成立するという観察学習の考えを提唱しました。

観察学習には以下の5つの効果があるとされています。

①観察学習効果:自分の行動パターンになかった新しい行動様式が習得される。

②制止・脱制止効果:すでに身に付けていた行動様式が抑制されたり,抑制されていた反応が解除されたりする。

③反応促進効果:観察対象の反応によって,自分が身に付けていた反応が触発される。

④環境刺激高揚効果:環境刺激に対して,適切に注意を向けたり反応したりするようになる。

⑤覚醒効果:観察対象の情動反応によって,自らの情動反応も喚起される。