心理学を学ぶ人のためのブログ

言語獲得の仕組みや発達・失語症

前回は,私たち人間が言葉を理解する仕組みについて説明しました。

公認心理師試験対策講座-言語の理解-

それでは,我々は言葉をどのように獲得してきたのでしょうか。

子どもに「これはりんご。」と示しながら言葉を教えることもありますが,周りの大人が使ったことのない言葉を子どもが突然話し始めるなんてことも多いです。

今回は,こうした言語の獲得の仕組みや発達の過程について説明します。


言語習得装置

アメリカの言語学者であるチョムスキーは,人間が生得的に有しているとする言語習得装置を提唱しました。

周りで使われている言語に対して普遍文法と言語習得関数が働き,個別の言語の文法を獲得するというものです。

普遍文法:人間が生まれつき有している言語を習得するための初期状態

 

言語習得関数:普遍文法を介して,与えられた言語の経験から個別言語の文法を形成するための関数

すなわち,日本語が使用されている環境で育てば日本語の文法を学習し,英語が使用されていれば英語の文法を獲得するという言語習得装置が生得的に備わっているという理論です。

この装置には,以下の3つの特徴があります。

①遺伝的に備わっている。

 

②人間の言語に特定的である。

 

③単純かつ複雑。(子どもが短期間に言語を獲得できるほどの単純性と言語の多様性を生み出せる複雑性を兼ねている。)

言語の発達

言語発達は,読み書きを除いて小学校入学頃には一応の完成を迎えていると言われています。

そして,言語の発達は音韻・単語・文の順序で進行します。

①音韻

新生児が発する言語は啼泣という鳴き声に限られています。

出産直後の啼泣には特に意味を持っていませんが,生後1か月を過ぎた頃からは空腹時や不愉快なときなどの場面に応じて泣き声が分化し,信号としての役割を持ち始めます。

 

生後2か月~7,8か月頃には口唇や呼気を使って「あー,うー」などの喃語を発するようになります。

まずは母音が発生可能になり,その後に「m,n,p,h,b」などの口唇音を身に付けてからその他の子音が発声されるのが一般的です。

②単語の発達

1歳~1歳半頃には1つの単語だけでコミュニケーションを行う一語文期が訪れます。

「ママ」などの1単語だけで要求を伝えようとし,単語であると同時に文としても機能しています。

 

また,最初に発する言葉を初語と言いますが,初語の発現が早いか遅いかはその後の言語発達にあまり影響しないとされています。

④文の複雑化

1歳半頃から毎日10単語ほどの割合で言葉が爆発的に増加します。

語彙が50を超えた頃(2歳頃)から2単語を並べて発語するようになり,3歳頃になると助詞を使用し始め,3単語程度からなる文法的にも正しい文を発するようになります。

 

6歳頃までは目の前の状況や親しい相手に対する話し言葉である一次的ことばを使用しますが,6歳を過ぎた頃からは現実から離れて,不特定多数の相手に対する話し言葉や書き言葉である二次的ことばを獲得します。



失語症

言語には聞く・話す・読む・書くといった機能がありますが,一度獲得された言語の機能が大脳半球の言語野を損傷することによって言葉の理解や表出に障害をきたした状態を失語症といいます。

言語機能の障害に応じて以下のように分類されています。

●運動性失語(ブローカ失語)

言葉の理解は可能だが,発語が困難。

 

●感覚性失語(ウェルニッケ失語)

発語は流ちょうだが,言語理解は困難。

 

●健忘失語

言語理解や発語はできるが,言葉にすること(喚語)や言葉を思い出すこと(失名詞)が困難。

 

●伝導失語

言語理解や発語はできるが,復唱が困難

 

●全失語

言語機能が全般的にわたって重篤に障害される

BrocasAreaSmall (ja).png
パブリック・ドメイン, リンクによる