心理学を学ぶ人のためのブログ

人はなぜ忘れるのか ~勉強したのにすぐに忘れてしまう人のための心理学~

「昨日調べたばかりなのにもう忘れちゃった。」

なんてことありますよね。

私もよくあります。3分前のことも怪しいです。

でも,「僕/私って記憶力悪いのかも。」
なんて気に病むことはありません。

人間ってそうゆうものです。

ドイツのエビングハウスという心理学者の実験では,新しく覚えたことの約3分の2がわずか1日のうちに忘れられてしまうことが明らかにされています。

この他にも記憶に関して様々な研究がされてきました。

今回は,忘却の仕組みに関する研究を紹介しつつ,効果的に記憶するためにはどうすればよいのかということについて説明していきます。


記憶の減衰

そもそも記憶とはどのようなものなのかということについては別の記事で説明していますので,そちらを確認ください。

記憶の仕組み

エビングハウスの記憶実験

さきほど紹介したエビングハウスの実験について,もう少し詳しく説明します。

彼は無意味綴り(BOKのような子音・母音・子音からなる3文字の綴り)という記憶材料を考案し,暗唱できるまで覚えた無意味綴りが,その後の1か月間にわたってどの程度忘れられていくのかということを調べました。

その結果,覚えていた割合(保持率)は以下のとおりです。

経過時間 保持率
20分 58%
1時間 44%
1日 34%
31日 21%

記憶してから1日のうちに急速に忘却が進み,以降は緩やかに忘れていくことが明らかにされました。

脳が不必要だと判断した情報は次々に失われていくわけですが,エビングハウスの実験では無意味綴りという特殊な材料を用いています。

日常生活において,意味のない情報を機械的に覚える場面はほとんどなく,この実験は日常生活における記憶とはかけ離れているのではないかという批判がありました。

そこで,イギリスの心理学者バートレットは有意味の材料を用いて実験を行いました。

バートレット効果

バートレットは,物語や絵画などを用いて数々の実験を行いました。

その中で発見された現象がバートレット効果と言われています。

物語を記憶させてから一定の時間が経過した後に物語を思い出してもらうという実験を行ったところ,時間が経つにつれて覚えた内容が構造化されて保持され,曖昧な内容や意味の少ないものは忘れられるという現象が見られました。

その人の知識や経験から作られたある事柄に関する認知(スキーマ)と整合性を合わせようという機能が働き,物語の細部が省略されたり,馴染みの薄い言葉が変換されたり,順番が入れ替わったりするといった変化が生じます。

このような時間経過とともに記憶が薄れていくという考え方を減衰説と言います。

記憶の忘却については,減衰説以外に,干渉説や想起段階の検索の失敗によっても説明されています。

記憶の干渉

ジェンキンスとダレンバックは,2人の実験参加者に10個の無意味綴りを覚えてもらい,その後,睡眠を取るか起きているかによって忘却に変化が生じるかを比べました。

結果は下の図のとおりです。

記憶をした後に眠っていたときの方が,忘却が進みにくいことが分かりました。

起きていれば次々と新たな情報が入ってくることから,他の事柄の影響を受けることによって記憶の忘却が進むと言えます。

ちなみに,ある時点における記憶がその後の経験した事柄の記憶によって干渉を受けることを逆向抑制と言い,それ以前の事柄の記憶によって干渉を受けることを順向抑制と言います。

検索の失敗

忘れていた記憶をふとしたことから思い出すという経験は多くの人があると思います。このような体験は,記憶の減衰や干渉だけでは説明ができません。

そこで,「忘れる」という現象は頭の中からそのデータが消去されるのではなく,頭の中のどこに入っているのかが分からなくなるという状態なのではないかと考えて研究をした人たちがいました。

再生の手掛かり

タルヴィングとパールストンは,記憶課題の材料を思い出される際に手掛かり(ヒント)を与えることで,思い出せる場合があることを示しました。

これにより,思い出せないからといって頭の中から情報がなくなっているとは言えないことが分かりました。

状態依存性

ゴドンとバッデリーは,陸上と水中とで記憶課題及び再生を行いました。

その結果,覚えたときと思い出すときの環境が一致しているときの方が,一致していないときよりも成績が良いことが分かりました。

また,アイク・とメトカルフェは,実験時に音楽を流して楽しい気分または悲しい気分に誘導し,記憶課題及び再生を行いました。

この実験からは,覚えるときと思い出すときの気分が一致しているときの方が成績が良いことが示されました。

つまり,記銘時と再生時の内的・外的な状況が記憶に影響を及ぼすということであり,この現象は記憶の状態依存性と呼ばれています。

効果的な記憶方法3選

記憶に関する研究をいくつか紹介してきましたが,最後に,どうすれば効率的に記憶できるのかということを説明します。

まず前提として,一発で覚えられる魔法のような方法はありません。

何度も反復することで知識は定着します。それを効率化するための方法を紹介します。

①記憶の体制化

関連する情報をまとめて整理する方法です。効率的に覚えられるだけでなく,ある情報が思い出せなくても,関連した情報を思い起こすことで再生できる場合があります。

 

新しい知識が入ったら,自分なりにまとめ直してみると効果的です。

 

また,似たジャンルの本を続けて読むことで,関連した情報が繰り返し入力されることになるので,記憶の体制化がされやすいと考えられます。

②視覚と聴覚を使う

新しく入ってきた情報は短期記憶に一時的に保管され,それから長期記憶に移されることで知識が定着します。

短期記憶から移される際には,視空間スケッチパッド(視覚的な情報処理)と音韻ループ(聴覚的な情報処理)という機能が使われます。

 

そのため,ただ資料を見るだけでなく,声に出して読むことで2つの機能が用いられることになり,記憶する効率が高まると考えられます。

③就寝前に学習し起床後に復習する

記憶の干渉の項目で説明したように,睡眠をしている間は忘却が進みにくくなります。

それを利用して,記憶が薄れる前に復習するという方法です。

おすすめ図書

最後に,記憶や認知についてもっと深く学びたい方へのおすすめ書籍を紹介します。

①認知心理学<2>記憶(東京大学出版会)

②10万人の脳を診断した脳神経外科医が教える その「もの忘れ」はスマホ認知症だった(青春出版社)