前回は脳や脳神経の構造などについて説明しました。
今回は,神経細胞の活動によって見られる脳波について説明します。
目次
脳波とは
脳波は脳電図とも呼ばれ,神経細胞の電気活動を記録したものです。時間経過による変化を捉えているため,波形の図になります。
イギリスの科学者であるカートン(Caton. R.)が動物の脳に電気現象が見られることを発見し,その後,ドイツの精神科医ベルガー(Bergaer. H.)によって人間の脳波が初めて記録されました。
脳波が計測できるようになったことで,脳の活動状態を推測することが可能となり,てんかんや脳器質疾患などの診断,認知機能の研究などが進みました。
脳波には自発脳波と事象関連電位があります。
自発脳波は,生きているだけで常に生じている脳波のことを言います。
事象関連電位は,感覚刺激や心的活動,随意運動などの特定の事象に関連して一過性に生じる電位です。
脳波の種類
精神活動の状態によって脳波の周波数が異なっています。
また,特定の周波帯の波が比較的よく現れることから,その周波数に応じて4種類に分けられています。
脳波 | 周波数(ヘルツ) | 特徴 |
---|---|---|
β(ベータ)波 | 13ヘルツ以上(振幅が小さく速い波) | 精神活動時(思考や集中など)に前頭・中心部に見られる。 |
α(アルファ)波 | 8~13ヘルツ(β波よりも振幅が大きく速い) | 安静・閉眼時に後頭部を中心に見られる。 |
θ(シータ)波 | 4~8ヘルツ(α波よりも振幅が大きく速い) | うとうとしているときに後頭部で見られる。小児では基本的な脳波。 |
δ(デルタ)波 | 4ヘルツ以下(θ波よりも振幅が大きく速い) | 熟睡時に見られる。乳幼児では基本的な脳波。 |
なお,てんかん患者では棘波(きょくは)と呼ばれる単発のスパイク様な波形が見られ,意識障害・知的障害などにおいては,θ波やδ波が覚醒時に見られることがあります。
睡眠時の脳波
睡眠は,睡眠の深さによって段階的に大別されています。
レム(REM)睡眠と段階1~4の5段階です。
段階 | 特徴 |
---|---|
レム睡眠 | 低振幅の脳波や急速眼球運動が見られる。筋緊張の消失,男性では陰茎勃起,女性では膣液分泌なども認められる。 |
段階1 | 入眠時のうとうとした状態。覚醒時のα波やβ波が消失し,代わりにθ波やゆっくりとした眼球運動(SEM)が見られる。 |
段階2 | 軽い睡眠状態。SEMが消え,脳波はθ波~δ波。睡眠紡錘波やK複合波も見られる。 |
段階3 | 中等度の睡眠状態。δ波が20~50%を占める。 |
段階4 | 深い睡眠状態。δ波が50%を超える。 |
段階1~4はノンレム(Non-REM)睡眠と呼ばれます。
「段階1→2→3→4→3→2→1→レム睡眠」を1周期として,約90分ごとに繰り返されています。