心理学を学ぶ人のためのブログ

脳神経系の構造と機能局在

今回は脳の構造や脳を構成している神経細胞の仕組みについて簡単に説明します。



神経細胞の構造

人間の脳は数100億個の神経細胞(ニューロン)から構成されています。

その大きさは1/200nm~1/10nmであり,細胞体,樹状突起,軸索という基本構造を持ちます。

細胞体

ニューロンの生命活動の中核です。

DNAを含む核,エネルギーを作るミトコンドリア,たんぱく質の合成を行うリボソームなどが含まれます。

樹状突起

細胞体から伸びた多数の細い突起で,隣接するニューロンから情報を受け取る働きをします。

樹状突起から入ってきた情報は電気信号に変換されます。

軸索

細胞体から伸びた長い1本の突起で,電気信号を他のニューロンに伝える役割があります。

途中で側枝を出しながら終末部分で枝分かれし,それぞれの先端にある神経終末(終末ボタン)が他のニューロンと接続しています。この接続部分はシナプスと呼ばれます。

ニューロンの機能は,ニューロン内における情報の伝導とニューロン間における情報の伝達です。

伝導

ニューロンの細胞膜の内側は外側よりも70mVマイナスの電位を持った状態で安定しています(静止電位)。

そこに閾値以上の刺激が加わると,静止電位が急激にプラス方向に変化します。

この電位変化は活動電位(インパルス)と呼ばれており,周りの膜にも同様の変化が発生し,細胞全体に減衰しないまま広がります。

また,軸索には髄鞘(ミエリン鞘)という絶縁体で覆われている部分があるため,髄鞘の継ぎ目であるランビエ絞輪を飛び飛びに伝導します。この伝導様式は跳躍伝導と呼ばれています。

伝達

2つのニューロンの接合部をシナプスと言いますが,シナプスは密着しているのではなく,わずかな隙間(シナプス間隙)があります。

活動電位が終末ボタンまで伝導されると,終末ボタンにあるシナプス小胞から神経伝達物質が放出されます。

そして,神経伝達物質が次のニューロンにある受容体に伝わるとシナプス後電位が生じます。

これが伝達の仕組みですが,1つのシナプスから一度に生じる電位は非常に弱いため,多数のシナプスから閾値を超えるだけのシナプス後電位が生じなければ次のニューロンにおいて活動電位が発生しません。

また,ニューロンの働きを支える細胞もあり,それらはグリア細胞(神経膠細胞)と呼ばれます。

アストロサイト(星状膠細胞)

星状の形態であり,ニューロンに栄養分を供給しています。

オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞)

ニューロンの軸索を多い,ミエリン鞘を形成します。

ミクログリア(小膠細胞)

ニューロンの機能を検診し,修復する働きがあります。



脳の構造

人間の脳は脳幹,小脳,間脳,大脳半球に大別されます。

脳幹

中脳,橋,延髄からなります。

自律神経系の中枢が集まっており,生命維持のための重要な働きを担っています。

ちなみに,延髄の尾部には神経線維のおよそ8割が左右に入れ替わる錐体交叉という構造があり,これより上部が脳,下部が脊髄と定義されています。

小脳

運動や姿勢の調節を担います。

筋肉や腱などからの深部感覚や内耳からの平衡感覚を司どっています。

間脳

視床,視床下部などに分けられ,多数の神経核が集まっています。

視床は体性感覚や視覚・聴覚の情報を大脳皮質へ投射する働きがあり,視床下部は自律神経系や内分泌系の中枢を担っています。

大脳半球

大脳半球の表面は大脳皮質と呼ばれ,その皮質下組織に大脳辺縁系,大脳基底核があります。

大脳皮質のほとんどは神経細胞と神経線維によって構成されており,灰白色の層(灰白質)を形成しています。一方,大脳の内部は大部分が軸索であり,白色の層(白質)になっています。

また,大脳皮質の表面には多数の溝があり,とくに深い溝(中心溝・外側溝)を目印として,前頭葉,頭頂葉,側頭葉,後頭葉に分けられています。主な機能は以下のとおりです。

・前頭葉:思考・意思・想像・遂行

・頭頂葉:空間認知・体性感覚

・側頭葉:聴覚

・後頭葉:視覚

Brain diagram ja.svg
パブリック・ドメイン

大脳辺縁系は記憶や情動の機能を司ります。

記憶については海馬,情動については扁桃体が重要な働きを担っています。

大脳基底核は大脳皮質と視床や脳幹をつないでいる細胞が集まる領域です。

大脳は表層が灰白質,内部が白質になっていると説明しましたが,大脳基底核は大脳の深い場所にありながら灰白質になっています。



機能局在

19世紀後半頃,ブローカやウェルニッケによる失語症の研究によって,大脳の言語中枢とされる部位が推定されてから,大脳のどの部位がどのような精神活動を担っているのかという機能局在論が注目されるようになりました。

現在では,機能の局在を感覚野や運動野などに限定し,局在間の連絡によって脳機能が成立するという考え方が主流になっています。この考え方を皮質繊維絡合主義と呼びます。

運動野

中心溝の前側である中心前回に位置します。

随意運動を制御しており,上側から下肢,胴,上肢,手先,頭部と対応する制御領域が並んでいます。

脳の部位と対応する体の部位の位置関係は上下左右が反転しています。

体性感覚野

中心溝の後側である中心後回に位置します。

温度感覚,皮膚感覚,痛覚,運動感覚などを司っています。

運動野と同様に対応している脳の部位と体の部位は上下左右が反転しています。

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パブリック・ドメイン

視覚野

後頭葉に位置します。

左眼の左視野と右眼の左視野からの視覚情報は大脳の右半球の視覚野に伝わります。

同様に,左眼の右視野と右眼の右視野からの情報は左半球の視覚野に投射されます。

聴覚野

右半球・左半球それぞれの側頭葉に位置します。

音声パターンの処理を担っています。

右耳と左耳から入るどちらの情報もそれぞれが右半球・左半球の両方に伝わりますが,右耳からの情報は左半球,左耳からの情報は右半球へとより多くの情報が伝達されます。